AI Dungeonのゲームクリエイターを取材しました!

2020年10月18日

AI Dungeonとは 

AI Dungeon(AIダンジョン)とは、AIが生成するテキストアドベンチャーゲームであり、クリエイティブAIの最新事例です。初代のAI Dungeonは、文章生成AIを利用してシーンやプレイヤーの選択肢を生成していましたが、AI Dungeon 2にはそれと大きく異なる点が一つあります。従来のように限られたコマンドや人間が作成したストーリーラインによって自由度が制限されることなく、AI Dungeon 2のプレイヤーは好きなことを入力できるのです。GPT-2の新たな改良のおかげで、ゲームAIがプレイヤーのテキスト入力に対応できるようになっています。

 

AI Dungeon2の仕組み

AI Dungeonは、ニック・ウォルトンがデビッド・ウィンゲート、マックス・ロビンソン、アラン・ウォルトンらの支援を受けて行ったプロジェクトです。その中心となるのは、OpenAIが開発したGPT-2(Generative Pretrained Transformer 2)の文章生成能力です。GPT-2は、大量のテキストデータでトレーニングしたニューラルネットワークです。このデータを利用して入力文章をスキャンし、データベース内の同様のコンテンツに基づいて次に何が来るかを予測します。こちらからご自分で試すことができます。

特定のフレームワークで文章生成を行うためには、タスク固有のデータでGPT-2ネットワークをファインチューニングする必要があります。データはタスクに応じて、ニュース記事やオンライン掲示板から詩やチャットボットまで様々なデータベースから抽出されます。AI Dungeon 2の場合、chooseyourstory.comのデータでファインチューニングされており、そのデータを使って独自の新たなストーリーを構成します。AI Dungeon 2をスタートする際は、まずファンタジー、ミステリー、終末もの、ゾンビ、カスタムからジャンルを選び、そのジャンル内のキャラクターのタイプを選択します。すると、クリエイティブAIが短いオープニングステートメントを提供し、最初のシーンをランダムに生成します。

今回は、AI Dungeonゲームクリエイターのニック・ウォルトン氏に取材し、AI Dungeonの今までの過程や今後の予定についてお伺いしました。

AI dungeonゲームクリエイターのニック・ウォルトン氏

 

AI・コンピュータサイエンスに関するバックグラウンド

「ロボット工学には常に興味がありました。実際、最初は機械工学を専攻しましたが、コンピュータサイエンスで行われている素晴らしい研究開発を目にしてコンピュータサイエンスに切り替えました。特にディープラーニングに魅了され、ブリンガムヤング大学のディープラーニング研究所で働くことになりました。当時はコンピュータビジョンと自動運転AIを研究していました。日本で自動運転車関連のインターンシップに参加し、その後、自動運転技術を手掛けるオーロラ・イノベーションで働きました」

 

AI Dungeonを作成したきっかけ

「当時はGPT-2が公開されたばかりの頃で、私はハッカソンでそれをいろいろ試してみました。すると、これを使っていくつかかなり面白いことができることに気づいたのです。ちょうど『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をプレイし始めた頃でもあったので、最初に考えたのが、AIダンジョンマスターを作れないだろうかということでした。そのアイデアを基にした最初のプロトタイプは、1億2600万個のパラメータで構成される最小のGPT-2モデルを使用していました。このプロトタイプはそれほど素晴らしい出来ではありませんでしたが、より大きなモデルでより多くのトレーニングを積むことで改良できる可能性があることがわかりました。おそらく、数千人の人がこのゲームをプレイしたことがあると思いますが、これがAI Dungeon 1です。翌年の秋には、より大規模なGPT-2モデルが公開され、トレーニング用のテキストアドベンチャーのデータセットも見つけました。そして、より大きなモデルでそのデータを使用してファインチューニングすると、ゲームの品質が大きく改善したのです。そこで、ColabバージョンのゲームとしてAI Dungeon 2をリリースしましたが、これで人気に火がつき、現在に至っています」

 

AI Dungeonに関してここ1年を振り返る

「最初のプロトタイプと比べてどれほど進歩したかを考えると驚きを覚えます。特に夏の間、作業できなかったことを考慮すると、九ヶ月の間にここまで進歩したのですから。今ちょうど取り組んでいる最大の課題の一つは、AI Dungeonの超オープンエンドなストーリーに「進展」や「持続する世界」などのゲーム要素をより多く取り入れることです。最初のAI Dungeonにはそれが欠けていたと思います。

連続的な自然言語要素を離散的なゲーム要素と統合する方法を見つけるのは実際のところ、とても大変です。「与えられたテキスト出力に応じて、離散モデルのどの値を更新すべきか」を知る必要があるからです。基本的に、必要に応じて様々なものを検出できる機械学習モデルが必要です。実際、私たちはちょうどクエスト検出モデルをリリースしたところですが、これがそうした方向へ向かう最初のステップになります。プレイヤーの各アクションによってクエストが攻略されたかどうかをゲームが検出できるのです。クエストが攻略済みかどうかは機械学習モデルを利用して分類するのですが、これは驚くほどうまく機能します。これを第一歩として、ストーリーで何が起こっているのか理解し、それらの要素を追跡してもっと面白いものを構築できるようにしています」

 

AI Dungeonのモデルを構築に掛かった時間

「インフラの構築は思った以上に時間がかかりました。私たちは非常に汎用的な言語モデルであるT5を使用しています。ユーザーがデータにラベル付けできる方法を設け、私たちがモデルのトレーニングやデプロイをできるようにしています。全体的なパイプラインとモデルアーキテクチャは構築できたので、高速化に取り組みたいと考えています」

二ヶ月半というのは一般的なゲームのアップデートスケジュールと比較して早いように思えますね。

「これはゲームにAIを利用することの強みです。主に二つの改善点があります。一つは、プレイヤーに完全な自由度を提供しつつ、コンテンツ生成、インテリジェントな対応を行うダイナミックな世界の構築です。もう一つは、開発者のコストに関するものです。Skyrim(スカイリム)などのゲームでは、およそ五年間にわたり数百人を雇用する必要があるため、非常に費用がかかります。理想的には、AIを利用することによって、開発者が通常行っていることの多くを削減できるでしょう。ゲームの包括的なテーマを定めておいて、細かいところはAIに任せればよいのです」

 

AI Dungeonが「持続する世界」

「持続する世界」については、いくつか基本的な課題があります。まず、AIモデルが生成のたびにコンテキストウィンドウで取り込める情報には限りがあるということです。最初のGPT-2では、これが約一千語でした。そこで、世界の情報のどの部分が重要なのかを見極める必要があります。

私たちはちょうど数日前に、ユーザーがゲームの世界に関していくつか定義できるシステムをリリースしました。例えば、王国や登場人物、アイテムなどに関する定義です。ゲーム内でこれらが言及されると、システムがその情報を取得し、認識します。これは「持続する世界」をつくるために私たちが行っている最初のステップです。

一方、システムは、モデルの出力に応じて世界に関する情報をどのように更新すべきかを理解する必要があります。これは少し厄介な課題ですが、私たちはその第一段階としてクエストモデルを開発しました。出力に基づいてクエスト情報を更新するのです。次のステップは、他の部分を構築することです。GISデータや位置を追跡する位置モデル、あるいは取得したり失ったりしたアイテムを追跡するアイテムモデルなどが考えられるでしょう。しかし、そのためのデータセットやシステムを構築しなければならないので、より時間がかかります」

 

AI Dungeonの開発中、データを追加することはできましたか

「私たちは今でもほとんどオリジナルのデータを使用しています。私たちが行った改良の大部分は、ゲームが文や単語を繰り返さないようにペナルティを追加するなど、サンプリングに関するものです。これらが主な変更点ですが、現在、有望そうな実験を他にもいくつか行っています。おそらく数週間後には、現在取り組んでいる今後のモデルアップデートについてもっと詳しくご説明できるようになるでしょう」

 

多くのデータを取得するより、スムーズなゲーム体験の方が重要なのでしょうか。

「多くのデータを取得することは重要ですが、適切な形式のテキストアドベンチャーデータには限りがあるので取得が難しいのです。また、誰にでも作成を依頼できるわけではないので、データ作成も困難です。そこそこの文章を書ける人はざらにいますが、素晴らしい文章を書ける人は多くありません。理想的には、こうしたデータを作成するために、適切なライティングスキルを持つ人に依頼したいと思うからです。ただし、データが少ないジャンルでは、穴を埋めるためにデータセットの作成を依頼する場合もあります。しかし、次に検討すべきは、現在のユーザーデータセットを利用してモデルを改良することだと考えています」

 

AI Dungeon今後一年の計画

「通常のゲームは時計仕掛けのように機能します。プログラミングシステムを構築できるので、事前にゲーム全体や全ての機能を設計することができるのです。一方、AIでは、そうはいきません。一つ一つの小さな部品を全て調節できるわけではないのです。様子を見てあちらこちらを剪定しながら作り上げなければならないガーデニングのようなものです。

私たちは新しい領域に踏み込んでいるので、何を実施するのか事前に細かく計画を立てることはなかなかできません。しかし、その代わり、非常に速いペースで新しいものを実験し、構築しています。ここ三、四週間の間にも大きな変更を加えました。世界に関する情報を作成し、クエストをアップデートし、ゲームの改良版もリリースしました。改良版では、基本的にプレイヤーが自分独自の世界に合わせてゲームをカスタマイズできます。

AIに対する私たちのビジョンの一つとして、ゲームデザイナーに取って代わるツールを目指すのではなく、彼らの仕事に役立つためのツールを生み出すということがあります。すばらしいゲームを簡単に作れるようにしたいのです。AIの力を借りれば一人か二人の人数ですばらしいゲームを構築できるとしたら、多くの人にゲーム構築への道が開かれます。

私たちは、人々がこのテクノロジーを使ってすばらしいものを作り出すことを期待しています。こうしたAIの機械学習や大規模なモデルのデプロイは、一般の人には非常にハードルが高いので、私たちが作成したインフラとプラットフォームを使って、それを基にすばらしいものを構築してほしいと考えています。結局、私たちはすばらしいゲームAIの制作を独占したいわけではなく、多くの人が自分独自のすばらしいゲームAIを制作できるようにしたいのです」

 

ご自身の仕事は研究開発の要素が大きいですか

「私たちは今でもほぼ研究開発センターです。AI Dungeonの作成に取り組んでいますが、私たちの仕事のほとんどは、これまで誰も試していないコンセプトを試すことです。例えば、クエストを自動的に検出する仕組みについて考えていますが、クエスト検出の後は、クエスト生成に取り掛かりたいと考えています。新しいクエストがあることを通知するちょっとしたポップアップ通知が表示されると想像してください。しかも、クエストはプレイヤーのストーリーに固有のものなので、誰もが経験したことのないクエストです。これは、ダイナミックに変化する世界の一例なので、非常に強力なアイデアです」

AI Dungeonをご自分で試してみたい方には、彼らのウェブサイトに複数のプラットフォームが用意されています。ニック・ウォルトンの研究については、彼のTwitterをご覧ください。


ライオンブリッジのAI教師データサービス

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