不動産業界のAI導入について、LIFULL HOME’Sデータサイエンティストの椎橋怜史さんに聞いてみた!

2019年05月09日

AIの一種として、近年、注目を集めているのが機械学習である。機械学習は、画像認識、自然言語処理などと、様々な分野への応用が始まっており、今後もさらに発展することが期待されています。機械学習技術は既に様々な業界で、次世代のサービスやプロダクトを開発するために必要不可欠な技術です。

そこで、今回はLIFULL HOME’Sのデータサイエンティスト、椎橋怜史さんを取材しました。不動産・住宅情報ポータルサイト「LIFULL HOME’S」は多くの方がご存知でしょう。身近な事例として、不動産業界がどのように機械学習を活用しているのかを、椎橋さんにお話していただきました。

 

椎橋さんの自己紹介と、LIFULL HOME’Sについて

椎橋さん: よろしくお願いします。

2016年にLIFULLに新卒として入社し、データサイエンティストとして主にデータ分析に関する仕事をしています。私の専門分野は数理最適化です。

LIFULL HOME’Sは、不動産や住宅情報、最良の情報品質によって住まい探しをお手伝いする、不動産・住宅情報のプラットフォームです。

 

LIFULL HOME’SはどのようなAIを活用していますか?

LIFULL社の写真

 

機械学習を用いた、LIFULL HOME’SのAIレコメンド機能

椎橋さん: レコメンド機能のモデル開発をしています。現在、LIFULL HOME’Sに公開されているレコメンド機能は、具体的な場所と予算内でお勧めな賃貸物件を教えてくれるモデルです。今後は、一人ひとりの条件に合ったレコメンド機能も公開できるように、研究を進めています。

レコメンド機能の難点は、一人ひとりにとって「正解」の物件が異なることと、お客様からいただけるフィードバックが少ないことです。

我々LIFULL HOME’Sでは、エンドユーザーが住み替えて1、2年経ってもまだ、その新しい物件を気に入っていてほしい、と考えています。
ですが、お客様が住み替えた一年後に「あー失敗したな!」と思った場合、その情報がLIFULL HOME’Sに返ってくることは少ないです。例えば、継続的にLIFULLサービスを利用していただけるような仕組みを作り、住み替え後のお客様の評価してもらうとか、住み替えの時間やコストを抑えたりできるような業界に変えるなど、課題解決していく必要があります。

 

LIFULL HOME’S PRICE MAP(プライスマップ)でAIを使った販売価格と賃料の予測

Lifull homes price mapウェブページのスクリーンショット

椎橋さん: LIFULL HOME’SのPRICE MAP(プライスマップ)では、AIを使って、アパート、マンションの販売価格と賃料を予測しています。その物件の築年や駅からの距離などのデータを基に価値を算出しています。

また、価格査定のAIを用いて、今までの不動産価格のトレンドや物件の市場価値やニーズなどを可視化できるサービス「見える!不動産価値」を展開しています。そのAIでは物件スペックに加えて時系列要素も特徴量として加えて学習させることで、市場の変化をとらえています。例えば、価格自体は過去と変化していないように見えても、同じ価格で購入できる物件の専有面積が小さくなったり、築年が古くなったりと、特徴量同士の関係性から見るとトレンドがはっきりすることがあります。そのため、シンプルに中央値や平均値などの集計値を算出するだけでなく、機械学習で価格と特徴量の相関を分析する必要があります。

 

LIFULL HOME’SのWeb広告の最適化

椎橋さん: 私が入社して一番最初に担当した仕事は広告費の最適化でした。LIFULL HOME’Sはグーグル、フェイスブック、ツイッターなど、Web上の様々な場所に広告を出しています。そこで、マーケティングオートメーションのアルゴリズム開発を行い、各Web媒体への予算配分を機械学習で計算しています。

広告予算を増加させたり減少させたときの投資効果がどうなるかを予測するのが難しい課題でした。予算を増やしても、集客数は比例して無限に増加しませんよね。例えば、アクティブなフェイスブックユーザーは国内で約2,800万人、世界で約14.9億人いるようです。フェイスブック広告にいくらお金をかけても、それをフェイスブックユーザーでない方に見てもらえることはないでしょう。なので過去の広告データを学習させて投資効果の予測をして各媒体への予算を計算するようにしています。

 

機械学習を用いた、LIFULL HOME’Sの賃貸物件の画像認識

椎橋さん: 賃貸物件の画像認識のために機械学習を使っています。画像をキッチン、寝室、玄関、物件の外観などと部屋ごとに分類するタスクをAIに任せています。

機械学習モデルは分類する画像ごとに共通する特徴を抽出して、学習していきます。例えば、キッチンの画像は大体コンロがありますし、バスルームの画像は大体お風呂場があります。

共通する特徴を学習するため、明るさや向き、撮影角度などが異なっても認識することができます。しかし、先ほどの例でコンロのような大部分の学習データに共通する特徴が写っていない画像に対してキッチンと認識させるのは難しくなってしまいます。

 

LIFULL HOME’Sでは、機械学習の精度をどうやってあげていますか?

椎橋さん: 機械学習の精度を向上する方法は、データの量(LIFULL HOME’Sの場合は画像の枚数)を増やして質を高めることです。

汚い画像や、あまりにも変な画像が学習データセットに含まれていると、品質が下がってしまいます。これは、AIは正しい画像(典型的な賃貸物件の画像)と変な画像の間の共通点を探してしまうからです。

 

LIFULL HOME’Sはデータのタグ付けにクラウドソーシングを利用している

椎橋さん: 学習データは、何万枚もの賃貸物件の写真が必要なので、LIFULL HOME’Sは画像データのアノテーションをクラウドソーシングで依頼しています。

クラウドソーシングを利用するとき、多少間違うこともあります。画像のタグ付けで迷った場合、クラウドワーカーにどうしてほしいかを明確にすることです。弊社では、迷った場合は保留にしてもらって、一度私たちに返してもらっています。間違ったタグ付けより、とりあえず保留にしてもらうほうが私たちも修正しやすいからです。

また、弊社は賃貸物件の外観と、物件の中から見た窓の外の景色の写真を、別のものとして扱っています。ただ、都内だと、窓の外の景色が向かいのマンションの入り口だということもありますので、人間が写真を見て判断できないことがよくあります。

椎橋さんから、AI導入を考えている企業へのアドバイス

椎橋さん: AI人材を雇って社内で開発していく、AIサービスを提供している会社に依頼する、あるいはその両方のやり方があると思います。

AI人材を雇う場合に確認しておきたいのは、社内にAIを開発するためのデータがあり、分析や機械学習に適した形式で管理できているかどうかという点です。それができていなければまず社内システムを整えるのが先になります。

また、他社サービスを利用したり開発を依頼したりする場合には、自社の課題が何なのか、それはAIでなければ解決できないのかを考えてほしいです。要件を整理するとAI開発よりシステム開発で充分なケースも多く、ブラックボックスになりがちなAIを無理やり導入しようとして失敗することも少なくないです。

いずれにしてもAI導入を考えているのであればAIで何ができるのか、AIを開発するためには何が必要なのかを知る必要があります。

一方でデータサイエンティストもAI部分だけ担当すればいいという考えを捨てて、課題が何かに向き合い、AIでどのように解決できるのかを関係者とコミュニケーションをとりながら進めることが重要です。それらを踏まえると、AIという新しい技術よりも、お互いに理解する姿勢を示し、チームワークを発揮できる組織を作ることのほうが何よりも大切に思います。

 

LionbridgeのAI学習データサービス

当社はAI学習データの収集、アノテーション、検証などのサービスを提供しております。どのようなAI開発プロジェクトでもしっかりと支援いたします。世界の各タイムゾーンを渡る、100万人の認定クラウドワーカーが登録されているので、大規模な機械学習プロジェクトも素早く仕上げることができます。

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